自分にとっての「ちょうどよさ」を探す暮らし
―『シンプリスト生活』Tommy 著 読書ブログ―
モノがあふれるこの時代、「少ない暮らし」や「シンプルな生活」に憧れを抱く人は少なくないのではないでしょうか。
そんな中で手に取ったのが、**Tommyさんの『シンプリスト生活』**でした。
この本は、よく耳にする“ミニマリスト”とは少し異なる、「シンプリスト」という新しい暮らし方を紹介してくれます。
■ ミニマリストとシンプリストの違い
本書の冒頭で印象的だったのが、「ミニマリストの中には、“減らすこと自体”が目的になってしまっている人もいる」という指摘です。
数を減らすことばかりに意識が向いてしまうと、かえってストレスを感じたり、暮らしが窮屈になってしまったりすることも。
それに対してシンプリストは、「自分にとって本当に大切なもの」を見極めたうえで、必要最小限にとどめるという姿勢。
“減らす”よりも“選ぶ”ことが大切だと感じさせられました。
■ 足したり引いたりして、心地よさを探す
すべてを手放せばいいわけではない。
むしろ、極端に捨てすぎると無理が出てしまう。
だからこそ、本書では「必要に応じて足したり引いたりしながら、自分の“ちょうどよさ”を見つけることが大切」と語られています。
心地よく暮らすためには、ただモノを処分するのではなく、自分と向き合うこと。
そのために「余暇を味わう」「五感を研ぎ澄ます」「素直に“いい”と思えたものを取り入れる」「書き出して整理する」など、実践的なアドバイスも散りばめられています。
■ 捨てる基準と、暮らしへの応用
第2章では、著者が実際にどのような基準でモノを手放してきたかが語られています。
「ときめくかどうか」ではなく、もっと現実的な目線での選び方。使っているかどうか、重複していないか、暮らしの中でどう機能しているか……。
第3章・第4章では、家事や仕事の場面でどう「シンプリスト的視点」を持つかが示されていて、ただの片付け本ではないことがわかります。
■ デザイナーならではの空間づくり
第5章では、Tommyさんがデザイナーであることを活かし、シンプルで美しいインテリアについて語られています。
“何もない”のではなく、必要なものだけが美しく整っている空間の魅力。
無機質ではなく、どこか温かみのある空間づくりに惹かれました。
■ シンプル=我慢ではない
この本を通じて感じたのは、「シンプルに暮らす」ということは、決して我慢や禁欲ではないということです。
むしろ、自分の心の声に耳を澄ませ、“本当に必要なもの”と丁寧に向き合うための選択。
それが「シンプリスト生活」なのだと感じました。
暮らしを見つめ直したい人、自分にとっての“ちょうどよさ”を探したい人に、そっと背中を押してくれる一冊です。